シンプルな推理小説のノベルゲーム『深夜零時の処方箋』

シンプルな推理小説のノベルゲーム(インタラティブフィクション)です。

簡単に言うと選択肢を選ぶことで内容が変わるタイプのマルチエンディングの小説。

選択肢は2択でグッドエンドは一つしかありません。

ただ読むだけではなく、選択肢があることでより楽しめることを期待しています。
それではチャレンジしてみてください

「刑事、現場に到着しました」
私は運転手の声に頷き、高級マンションの玄関を見上げた。
11月の冷たい雨が、アスファルトを叩いている。
着任して3年目の秋。
今回の事件は、IT企業「Future Tech」の社長、村上大輔氏の変死事件だ。

＜事件概要＞
発見日時：11月15日午前8時30分
場所：青山グランドマンション1201号室
被害者：村上大輔（45歳）
状況：リビングで倒れているところを秘書が発見

現場に到着すると、すでに鑑識課が作業を始めていた。
リビングには、テーブルの上に水の入ったグラスと、床に落ちた携帯電話。
パソコンは開いたままで、画面にはメールソフトが表示されている。
まず、誰から話を聞くべきか。

秘書の山田玲子（32歳）は、落ち着いた様子で話し始めた。
「いつもより早く会社に行こうと思って、社長を迎えに来たんです。
でも応答がないので、持っている合鍵で開けたら...」

＜秘書の証言＞
・朝8時30分に到着
・被害者は普段9時に会社に向かう
・昨夜は重要な商談があった
・最近、社長は誰かと電話で口論していた

「昨夜の商談相手は覚えていますか？」
「はい、ベンチャー企業のCEO、藤原さんです。
確か、買収の話し合いだったと...」

妻の村上美咲（42歳）は、真っ赤に泣き腫らした目で話し始めた。
「昨日の夜、主人は遅くなると言って...。
私は早めに寝てしまって、気付いたら警察の方が来ていて...」

＜妻の証言＞
・夫婦仲は良好
・最近、夫は仕事のストレスを抱えていた様子
・昨夜は商談があり、夜10時頃に「まだ帰れない」とメールがあった
・夫は持病があり、定期的に薬を服用していた

「ご主人の様子で、何か気になることは？」
「ここ1週間ほど、誰かと頻繁に電話をしていて...。
声を潜めて話すこともあったんです」

藤原健一（38歳）は、警察の聴取に対して冷静に応じた。
「昨夜の商談は午後8時から9時半まででした。
その後、私は自宅に直帰しました」

＜商談相手の証言＞
・商談は買収の話し合い
・村上社長は買収に難色を示していた
・商談後、村上社長は誰かと電話をしていた
・アリバイ：9時45分のタクシーの領収書あり

「買収の話し合いは難航したのですか？」
「ええ、村上さんは会社を手放したくないと。
でも、大株主の意向で...」

パソコンの調査で、重要なメールを発見した。

＜メールの内容＞
差出人：大株主斎藤洋介
日時：11月14日 23:45
件名：最終警告
「度重なる買収拒否は株主の利益に反する。
明日の取締役会で、あなたの解任を提案する」

さらに調べると、村上社長の返信メールも。
「全てを公表する覚悟はありますか？」

医療記録によると、村上社長は高血圧の治療を受けていた。
処方箋には降圧剤の記載。

＜医療情報＞
・主治医：渡辺医師
・処方薬：カルシウム拮抗薬
・最近の容態：安定
・服用頻度：1日1回就寝前

しかし、現場で発見された薬には異変が。
薬の色が、普段の処方薬と微妙に異なっている。

通話記録を調べると、気になる発見があった。

＜通話記録＞
11/14 21:30 - 藤原健一（5分）
11/14 22:15 - 斎藤洋介（15分）
11/14 23:00 - 秘書・山田（3分）
11/14 23:50 - 非通知（2分）

最後の非通知通話が特に気になる。
その直後に、村上社長は倒れたと推定される。

大株主の斎藤洋介（50歳）は、高級ホテルの一室で調査に応じた。

＜株主情報＞
・保有株式：35%
・買収提案の主導者
・村上社長との関係：以前からの確執あり
・アリバイ：ホテルの防犯カメラで確認可能

「私は村上を解任しようとしただけです。
殺害する理由などありません」
しかし、机の上には見覚えのある薬の空箱が...

山田秘書を再度呼び出し、慎重に聴取を開始。
彼女の表情が、わずかに強張る。
「実は...私、昨夜お薬を届けに行ったんです」

＜新たな証言＞
・23時に薬を届けた
・薬は大株主から預かったもの
・社長は普段と様子が違った
・深夜の電話は自分からかけた

そこへ、薬の分析結果が届く。

全ての証拠が、一つの真実を指し示していた。
「山田さん、もうやめにしませんか」
私は静かに切り出した。
「薬の成分分析の結果が出ました。
通常の降圧剤に、大量の睡眠薬が混入されていた。
そして、あなたの指紋が...」
山田秘書は、ゆっくりと顔を上げた。
「株は、私の父が遺したものです。
斎藤さんは私の叔父...。
でも村上社長は、父の会社を私物化して...」

【グッドエンド：真相解明】

事件の真相が明らかになった。
山田玲子は、亡父の会社を守るため、叔父の斎藤と共謀。
しかし実行犯は彼女一人だった。
持病の薬に細工をし、深夜の偽装電話で動揺を誘い、過剰摂取へと仕向けたのだ。
完璧な計画に見えた殺人も、小さな証拠の積み重ねで崩れ去った。

「斎藤さん、あなたを村上社長殺害の容疑で逮捕します」
しかし、決定的な証拠は不十分だった。
後日、新たな証拠により、真犯人が別に存在したことが判明。
取り返しのつかない判断ミスを犯してしまった。

【バッドエンド：誤認逮捕】

薬の分析結果が届いた。
しかし、その結果だけでは事件の全容は見えない。

＜分析結果＞
・降圧剤に睡眠薬が混入
・指紋は複数人のものが検出
・薬の製造番号は正規のもの

「これは事故か、自殺か、それとも...」

渡辺医師は、患者の突然の死に驚いた様子だった。

＜医師の証言＞
・最近の検査結果は良好
・処方した薬は通常の降圧剤
・自殺企図の兆候なし
・先週の診察では前向きな様子

「村上さんは、最近の治療に特に前向きでした。
むしろ、新しい事業の話で活気づいていたほどです」

非通知番号の追跡結果が届いた。
しかし、その結果は事件を更に複雑にする。

＜追跡結果＞
・公衆電話からの発信
・場所：被害者マンション近くのコンビニ
・防犯カメラには不審な人影
・通話時間：1分47秒

映像の人物は、どこか見覚えがある...。

会社の財務状況を詳しく調べると、意外な事実が浮かび上がった。

＜財務調査結果＞
・巨額の負債隠し
・架空取引の痕跡
・個人口座への不審な送金
・保険金の受取人変更（1週間前）

「これは...完全な粉飾決算では？」

「この事件は、自殺と判断します」
財務の粉飾が発覚する直前、自ら命を絶ったという結論。
しかし後日、真犯人から告白文が届く。
決定的な証拠を見落としていた。

【バッドエンド：誤った結論】

「これは不慮の事故死と判断します」
薬の過剰摂取による事故死という結論。
しかし数日後、決定的な証拠が発見される。
真相は、巧妙に仕組まれた殺人だった。

【バッドエンド：真相見逃し】

「犯人は、被害者を尾行していたストーカーです」
マンション付近の不審人物という安易な推理。
しかし防犯カメラの映像は、偽装工作だった。
内部犯による完全な罠に、私は嵌められていた。

【バッドエンド：誤った推理】